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白紙の図書館とは?

ようこそおいで下さいました。ここ、「白紙の図書館」はHAtAが書いた、
色々なものを公開中です。

現在は2016年12月1日より再開した『キャラ日記』がメインコンテンツです。
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本家サイト『白紙の図書館』も更新中。
http://hatanabe.web.fc2.com/
こちらもよろしくお願いします、。

不定期になったり、集中連載になったり波はありますが、ご容赦ください。
それではどうぞごひいきに!!

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http://hatanabe.blog.so-net.ne.jp/

2016年10月8日やぶきたと鶴松改訂版#005 [小説:やぶきたと鶴松]

『違ーうッ!! 破竹の構えはこうじゃ!!』
「こ……こう?」
『うむ。続いて雷電の構えの修行じゃ』
 あの日以来、タツヤと辰衛門の二人羽織のような
特訓の日々が続いていた。
 だが、傍から見ていた千春ちゃんにはどうしても
武術の特訓にしか見えない。
「……うーん……。大丈夫なのかな、これ」
 こうして修行(?)を重ねること1週間後。
見事な細マッチョに仕上がったタツヤがいた。
「こ……これは……何ともオツな……」
 さらに魅力的になったタツヤを見て、千春ちゃんは
ハァハァが止まらない。
『さあ、タツヤよ。今こそ「虎王蕎麦」伝授の時じゃ』
 タツヤは教わった通りに蕎麦を作っていく。
その姿は在りし日の辰衛門そのもの。
ものの見事な「虎王蕎麦」を作り上げた。
「わあっ……あの、試食していいですか?」
『うむ、お嬢ちゃんの神の舌なら十分じゃ』
 そういうと千春ちゃんは大事そうに蕎麦を味わう。その結果。
「……うん……うん!! 店長!! 完璧です!! おじいさんの
お蕎麦そのものですよ!!」
 その瞬間、タツヤの体から役目を終えた辰衛門の霊魂が
するりと抜けだした。
「タツヤよ。お主に教えることはもう何もない。
今後も精進し、やぶきた蕎麦の看板を守るのじゃぞ?」
「うん」
 感慨深い辰衛門に対し、極めてドライなタツヤ。
『……………………』
「……………………?」
 少しの間、沈黙が間を埋める。
『いや、何か他に言うことあるじゃろ?寂しいーとか、
行かないで―とか』
「無いよ?」
 引き止めてほしい辰衛門の態度に対し、
タツヤは全く未練はない。

『……………………』

『こ……の……孫のクセに!! じいちゃんに対する愛情は
ないんかい!!』
「ねーよ!! この一週間(精神内でだけど)俺、殴られっぱなし
じゃねえか!!」
 一方的な愛情と、この1週間のシゴキで若干、二人の間に
溝ができていた。
『よぅし……蕎麦の真髄のほかに、虎狩りの真髄も
叩き込んだるわ!!」
「おーし!! 今までの俺じゃねーぞ!! やるだけやったらぁッ!!」
 こうして味気もへったくれもないケンカが、辰衛門の
お見送りとなった。
 だが、最後に辰衛門はこう残してこの世を去った。

『いいか……? 和美にだけは気を付けるんじゃぞ?』

 和美はタツヤの母。この言葉の真意を知るのはまだ
先の事になる。

 そして数か月後、事件は急にやって来た。

 あと。
「これから、毎日あのお蕎麦打つんですね……。店、大丈夫かな」
 店の老朽化を心配する千春ちゃんに、
「それなんだけどさ。ここだけの話」
 タツヤは辰衛門の気配が完全に消えたのを確認して、
「?」
「普通に打っても、あの味……出せる」


         

 辰衛門が成仏し、数週間。タツヤと千春ちゃんは必死に奔走し、
やぶきた蕎麦リニューアルオープンを宣伝していた。
 千春ちゃんは女子高生ならではのSNSを駆使し、拡散。
 その味は大変、評判を呼び徐々に集客を上げ、
今では再び行列ができるまでに、客足を回復させるに至った。
 
 そんな季節が秋の入り口に差し掛かっているころ、
やぶきた蕎麦の向かいに何やら工事が始まっていた。
 そんな工事を横目に一人の男子高校生が入ってきた。
「おはようございまースッ!!」
 元気な声で店に入ってきたのは、新たな従業員の一人、三上君。
 収入も安定し、客が増えたことで新たな従業員が必要になり、
今回、バイトで二人雇うことになった。三上君は元気が売りの
千春ちゃんタイプ。
 先輩の千春ちゃんの指導のおかげもあって、即戦力として
活躍してくれている。
「それにしても、うっさいスねぇ……向かいの工事」
「そうねぇ、何が建つんだろ」
 千春ちゃんがエプロンをつけながら返事をする。
 実際、連日工事の音が続いているが、営業には支障は
出ていない。

「おはよう、タツヤ君は下準備中かな?」
 その声に千春ちゃんの表情が明らかに険しくなる。
「恵子さん、おはようございまースッ!!」
「おはよう三上君。今日も元気そうね」
「へへ、それだけが取り柄っスから」
 そう、もう一人の従業員は恐山ミキ改め山田恵子。
 長い髪を短く切り、派手な化粧も落とし、服装もラフで
カジュアルなものに。
 もともと視力も悪かったのでコンタクトから眼鏡に
変えている。
 あの後、霊能力を失い芸能界で居場所がなくなると、
即座に引退。
 そのことを知ったタツヤが自分の店の従業員として
招き入れたのである。
「……遅いですよ、恵子さん。いくらあなたがこの店の
救世主だったとはいえ、今は一番下っ端なんですからね!!」
「ご、ごめんなさい。昨日、残って掃除してたものだから……」
「え……。もしかして、それって店長と……」
「うん。二人で」
「きーッ!! あ、アナタという人はぁッ!!」
 タツヤに恋心を持つ二人。 
 恵子の性格はミキの頃とは、比べ物にならないほど豹変し、
おっとり物腰柔らかで、客からの人気もとても高い。
二重人格とはまさにこの事である。芸能人だったミキの頃は、
明らかに無理をしていて、それが表にも出ていたのかもしれない。
 何はともあれ、タツヤが好意を持っていた頃の恵子が
帰ってきた。
 しかし、事件とはこの事でもない。
 この後、やぶきた蕎麦最大の危機が訪れようとしていた。

 11月に入り、季節は少しずつ寒くなっていく。
相変わらず、やぶきた蕎麦は繁盛していた。

 ……「あれ」ができるまでは。

 明るいオレンジの電飾の看板に、三階建ての充実したフロア。
清潔感にあふれた店内。活気とサービス精神にあふれた
従業員たち。格安の値段で食せる至高の味。

 それは『そばの鶴松』

 全国にチェーン展開し、次々とライバル店を吸収。
業界を荒らしに荒らしまくっている、モンスター企業。
ついにやぶきた蕎麦まで視野に入れてきたのだ。
「あー……まさか……」
「ええ……」
「……うぬう……」
「……大丈夫ですか、店長?」
 やぶきた蕎麦の店舗の向かいの工事。
その正体はそばの鶴松のチェーン店の建設だった。
「た、大変ですよ!!うちも買収されちゃうんじゃあ……」
 あの鉄の心臓を持つ千春ちゃんでさえ、オロオロと
うろたえる姿がよく目立つ。
 無理もない。噂によるとチェーン店とは思えない美味の
蕎麦を出すのだという。
 今日もそばの鶴松の前には行列ができている。
しかも不安材料はそれだけではない。
 そばの鶴松の開店当初は互角だったお客様の行列が徐々に
吸収され、今では確実に負けている。 今ではお客さんは
ごひいきさんくらいである。
「おかしいですねぇ……私が呼んだ辰衛門さんのお蕎麦は
まさに天下一品だったのに……」
 恵子はあまり動じていないように見える。感情があまり表に
出ないせいもあるが。
「大将、こりゃあ何とかしなきゃいけないんじゃあ……」
 三上君も新参者だが、この状況は予想していなかった。
 繁盛していたからバイトに入ったのに……。
 しかし、三上君はやぶきた蕎麦を裏切らない。
 理由は蕎麦の味に感動したからでも、バイト代が良いから
でもない。理由は他にある。
「ど……どうしよう、三上君……。
な、何か良い案無いかな……?」
「お……おう!!俺に任せといて、千春さん!!俺がこの店を
救ってみせますよ!!」
「……恵子。三上君、まさか」
「……惚れてるねー……、アツいねー……」
 タツヤと恵子の推察通り、三上君は千春ちゃんに惚れていた。
入店当初からの一目ぼれ。その後、元気な性格と可愛さを見て
さらに心奪われていた。千春ちゃんとの違いはクリーンで
あることか。

 その時、一台の高級車がやぶきた蕎麦の前に止まった。
そこから下りてきたのは、コートを派手に着飾った大男と、
恵子が「よく知る」細身の男性。
 何か冷たい冷気のようなものを感じた4人。
 この冷気はタツヤ、恵子、千春ちゃんは感じた覚えがある。
男たちはやぶきた蕎麦の引き戸を開けた。
「あ……いらっしゃいませ、2名様ですか?」
 三上君が接客に入る。しかし、様子がおかしい。
「いやいや。私たちはお客ではありません。店長さんは
いらっしゃいますかな?」
 恵子がその二人の顔を見て……と、いうか細身の男を見て
表情が変わる。その男はもはや自分とは関係ない男、
「私この度、そばの鶴松の顧問アドバイザーとなりました
鬼島と申します。お久しぶりですねぇ、ミキさん」
「き……鬼島さん!?霊界に帰られたのでは……!?」
 そう恵子……いや恐山ミキのマネージャーにして 
霊界からの監視員だった鬼島その人。そして……。
「俺はそのそばの鶴松の会長大門という!! 店長はいるか!?」
 大男の会長大門は声も大きかった。

 奥からタツヤが出てきて、妙な緊張感が辺りを包む。
「……これはどうも、店長の波橋タツヤです。
お向さんは順調なようですね……。おめでとうございます」
 その言葉には当然、心はこもっていない。
「鬼島さん、これはどういう……」
 さすがの恵子も動じた様子で、問いかける。
「いやぁ、実はあなたのこのやぶきた蕎麦の再建方法に大変、
感銘いたしましてねぇ……。あのまま霊界に帰っても
良かったのですが、ひとつビジネスを思いつきまして。
現世で一儲けさせていただくことにしたんですよ」
「……千春さん、霊界がなんたらって……漫画の話ですか?」
「あ、それは後で話してあげるから。ちょっと何ですか!?
ま、まさか……!?この店を買収して味を盗もうって
いうんじゃ!?」
 状況が分からない三上君をなだめ、
千春ちゃんは食って掛かる。
「いえいえ、その心配には及びません。
「その点」に関してはすでに手は打ってあります。今日、
訪れたのは……」
「直々に実力でぶっ潰しに来たのだ!!」
『な……何だって!?』
 覇気を纏(まと)ったかのような大門の大声に4人は思わず
身構える。
「ちくしょう……あいつ、強そうだな。苦戦しそうだ……」
「わ……私、ケンカは無理よ……?」
「子供の頃、空手やってたけど……駄目だ、強い!!」
「諦めちゃ駄目よ!!でも……くっ……」
「……いや、あの……。あくまで蕎麦屋としてね?」
 力ずくと勘違いする4人に冷静になだめる大門。
「ま……まあいい。とにかく後日正式に申し込むが、
TV番組で我ら、そばの鶴松と対決してもらいたい。
その企画でそちらが勝てば我々は正面の店舗をいさぎよく
撤去しよう。いかがかな?」

 タツヤは瞬時に理解した。天下の名店にまで回復した
やぶきた蕎麦を倒せば、そばの鶴松は今以上の名声を得られる。
それに、敗けたところで数多ある店舗が一つ減るだけ。
ダメージは浅い。しかしこのままでは、いずれは以前に逆戻り。
 いや、もしかすると前よりひどくなるかもしれない。

「いいでしょう!! 受けて立ちます。じっちゃんの名に賭けて
勝ってみせます!!」
 どこかで聞いたようなタンカで気合を入れるタツヤ。
「ふふ……職人魂はあるようだな。勝負は一か月後。
良い勝負をしよう」
「それでは我々はこの辺で……」
 大門と鬼島はきびすを返し、去って行った。
「て……店長、いいんですか?」
「大将、大きく出ましたね!! さすがッス!!」
「大丈夫なの?タツヤ君……勝算はあるの?」
「いやあ……どうだろ……勢いでつい……」
「………………」
 不安な空気が店内を包み込んだ。
 車内の大門と鬼島。二人には絶対の自信があった。
「ご協力感謝します。あなたが味方なら百人力ですよ」
「……約束は守ってくれるのでしょうね?」
「……もちろん。商売は信用が一番ですから」
「……どうだか……」
 とある女性の声に鬼島は余裕を持って答えた。
車はそばの鶴松の本社へと向かった。

 その日のやぶきた蕎麦の店じまい後、作戦会議が開かれた。
「そもそも何でウチの客が向かいの店に流れたのか……。
考えるのはここからだな」
 タツヤたちは一つずつ検証してみる。
「まず味っスよね?ウチより美味いから……ってのは、
考えにくいかなー……」
 まずは三上君が推理してみる。この点は疑いようがない。
 やぶきた蕎麦は今や、味に絶対の自信を持っていた。
「そうね……値段ならチェーン店の向こう側に分があるわね。
こちらは厳選した素材で勝負してるから……」
 恵子の意見も納得だが、ここまで客を取られる原因とは
考えにくい。
「よーし、こういうのはどうでしょう?ゴニョゴニョ……」
「……いいねそれ!! まずはそれだ!!」
「さすが!! やっぱり千春ちゃん、頼りになるわね!!」
「お、俺!! 一緒について行くッス!!」
 千春ちゃんの提案に一同は賛同。
 次の日、その計画は実行に移された。



続く

今日の一曲
タイトル:江 ~姫たちの戦国~
アーティスト:吉俣良
アルバム:江 ~姫たちの戦国~

NHK大河ドラマ オリジナル・サウンドトラック「江~姫たちの戦国~」

NHK大河ドラマ オリジナル・サウンドトラック「江~姫たちの戦国~」

  • アーティスト: 吉俣良
  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2011/02/16
  • メディア: CD

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